平成之大馬鹿門についての考察




「平成之大馬鹿門」。あれはいつのことだったか、調べてみると平成8年(1996年)のこととのこと。ちょうど、インターネットの黎明期の頃だったのかもしれません。彫刻家・空充秋氏が、「平成之大馬鹿門」と銘を彫った自作の石門を、京都市北区の佛教大学に寄贈したが、大学側が「馬鹿という言葉は大学には不適切。削ってほしい」と要求し、大騒動となったことが記憶の片隅に残っていました。

「作品を削れというのは、自殺しろというのと同じ」と、空氏は反論するも、大学側が「馬鹿」という言葉にこだわり、結局、受け取りを拒否し、空氏は「平成之大馬鹿門」を自宅に持ち帰ったとのこと。その後、空氏のもとには全国から譲渡の申し入れが殺到し、兵庫県千種町が選ばれ、千種町の「空山」と「おごしき山」の山頂に建てられ、名所となっているそうです。 → ちくさええとこネッと

仏教と関係があるのかないのか知りませんが、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という諺にもあるとおり、「大馬鹿門」をくぐって、大学に入ることは、どこか教訓めいて、素敵なことであるのに、どうして、大学は受け取りを拒否したのか、不思議な気がしてなりませんでした。

たしかに、「馬鹿」という言葉は不見識であるという批判や、「馬鹿」という言葉に、敏感にならざるを得ない入試事情もあったのかもしれませんが、人間を不完全な存在とみなし、阿弥陀仏への帰依を唱える浄土宗の宗旨から見ても、仏の教えと通じるところがあるように思えてなりません。

空 充秋「平成之大馬鹿門」国書刊行会(1997年) 空 充秋(そら みつあき)氏




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